あわ雪茶屋

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制作 2016年4月

とある日の、だいぶ陽も高くなってきた頃。「お腹がすいたなー。そろそろ休憩してお昼ごはんにしよう!」あれが食べたい、いやこれにしようかと、腹の虫をなだめつつ悩むのが楽しい時間です。
毎日のご飯も楽しみですが、旅に出たときには、食事の楽しみはひとしおです。せっかくだから、この土地でしか食べられないおいしいものが食べたいという気持ちは、いつの時代も変わらないと思います。

すげ笠をかぶったとりさんも、そんな旅人の1人です。
振り分け荷物を背負い、東海道を西から東へと歩いて旅する途中です。
(お昼は何を食べようかな)
周りを見渡して見れば、街道は多くの人が行き交い、通りの両側にはお店が立ち並んでいます。お昼どきのため通りは一層賑やかで、お店に呼び込む店員さんの声と、どのお店に入ろうか悩むお客さんの声があちらこちらから聞こえてきます。そこに、どこからともなくおいしそうな匂いが漂ってきて、ますます食欲をそそられます。
さて、どのお店に入ろうかなと迷いながら歩いていると、ひときわ賑わっているお店がありました。看板には「あはゆきちゃや」の文字。店内から聞こえる活気にあふれる声、漂うおいしそうないい匂い。
ここにしよう、とお店に向かっていきます。

うってかわって店内も、街道に負けない賑わいです。空腹に耐え切れずご飯をかきこむ人、お酒を片手にほろ酔いの人、洗練された動作で食事をする身分の高そうな人、いろんな人が集まって食事を楽しんでいます。街道に面した側は広く開け放たれ、窓も大きく取られた店内には、明るい光が差し込んでいます。狭いお店ですが、明るさに店の内外の活気や旅という非日常も相まって、開放感にあふれています。
通りの近くに腰をおろした仲良し2人組のとりさんも、例に漏れず昼食を楽しみにしているようです。運ばれてきた料理を前に話しています。
「岡崎宿に来たからには、淡雪豆腐を食べずには帰れないってもんだ」
「早速食べようじゃないか」
2人が注文したのは、もちろん名物の淡雪豆腐。丸くて柔らかな豆腐に、醤油で味付けした葛溜まりをかけてわさびを添えた淡雪豆腐と、黒豆などを入れて煎じ茶で炊いた茶飯、香の物がセットになっています。
旅行案内の本を読めば、岡崎宿にあるあわ雪茶屋の淡雪豆腐はおいしいと評判で、立ち寄った際にはぜひとも食べてみたいと、2人は思っていました。
箸を手に取り、淡雪豆腐が崩れ落ちないようにすくい、気をつけてほおばります。お味ははてさて…?



江戸時代、東海道岡崎宿の東のはずれ、投町(なぐりまち)にあったとされる「あわ雪茶屋」の風景



参考文献

  • 柴田 顕正 編 『岡崎市史 第3巻』 1926年
  • 新編岡崎市史編さん委員会 編 『新編 岡崎市史 第3巻 近世(本文編)』 1992年
  • 新編岡崎市史編さん委員会 編 『新編 岡崎市史 第20巻 総集編』 1993年
  • 遠山 佳治 『岡崎の名物「あわ雪」の歴史』 (岡崎地方史研究会 編 『岡崎百話』 1992年)
  • 嶋村 博 編 『岡崎宿伝馬』 1994年
  • 豊橋市二川宿本陣資料館 編 『たべあるき東海道』 2000年
  • 杉浦 日向子 『一日江戸人』 2005年