あわ雪茶屋の話 その3

その1その2であわ雪茶屋の建物について話をしてきました。今回は、「あわ雪」の話をしていこうと思います。

あわ雪茶屋はその名のとおり、「あわ雪」を売っていたお茶屋です。茶屋という名前が指すお店の営業形態はいろいろありますが、ここでは料理を食べたりお茶を飲んで休憩できる、喫茶店のようなお店を想像してください。

そこで売られていたあわ雪とは、一体どんな食べ物だったのでしょう?

ネットであわ雪を検索すると、全国各地のいろんな商品が出てくると思います。しかし、食べ物に限れば、大半がお菓子です。
この検索結果だけを見ると、「あわ雪は江戸時代から続くお菓子なんだなー」と思いますよね。実際、峠の茶屋なんて聞くと、旅人が休憩に立ち寄ってお団子食べているイメージがわく方も多いのではないでしょうか?

だがしかし、あわ雪茶屋で旅人たちが食べていたのは、お菓子ではないんです!
実は、あわ雪茶屋で提供されていたのは「淡雪豆腐」というあんかけ豆腐です。淡雪豆腐は丸い形と柔らかさが特徴の豆腐で、あんをかけて食べたそうです。あわ雪茶屋では、この淡雪豆腐にご飯と香の物がセットでついてきました。おいしいお昼の定食ですね。

そもそも淡雪豆腐の発祥は江戸にあったお店だそうで、いつしか岡崎宿にも入ってきて根付いたようです。ちなみに淡雪豆腐という料理は、江戸時代の豆腐料理100選ともいうべきレシピ本『豆腐百珍』にも掲載されており、人気を博していたことがうかがえます。
淡雪豆腐の味付けは大きく分けて2種類あり、豆腐に葛溜りをかけて海苔とわさびを添えたものと、鰹出汁と醤油にすりおろした山芋を混ぜて豆腐にかけたものがあったそうです。老舗のお菓子屋さんには淡雪豆腐は葛あんであったと伝わっているそうですが、本当のところあわ雪茶屋ではどちらの味が提供されていたのかはわかりません。作品の制作にあたっては、豊橋市二川宿本陣資料館『たべあるき東海道』に掲載されていた模型の見た目が前者の葛あんだったので、そちらを採用しています。淡雪豆腐を描いた挿絵の図版が掲載されていますが、確かに、海苔のわさびが添えられているように見えます。そういうわけで、作品の写真を見ていただくと、白い半球状の淡雪豆腐の上に、茶色のあんがかかっています。

江戸時代には千客万来で繁盛していたあわ雪茶屋ですが、明治時代になって交通手段が鉄道に移ったことにより、岡崎宿が衰退し、あわ雪茶屋も淡雪豆腐もなくなってしまいました。
しかしその後、地元の老舗お菓子屋さんが淡雪豆腐をお菓子として再登場させました。それが現在、岡崎市の店舗で販売されている「あわ雪」というお菓子です。

「あわ雪」はいろんなお店で様々な味の商品があります。明治から変わらないであろう素朴な味のものから、果物ソースをかけたりチョコレート味になっていたりと種類も豊富です。ちなみ以前、チョコレート味のものを食べたことがあるのですが、甘さ控えめのチョコレートムースのような味と触感でした。興味がある方は一度ご賞味あれ!

参考文献

  • 遠山 佳治『岡崎の名物「あわ雪」の歴史』 1992年(岡崎地方史研究会『岡崎百話』)
  • 豊橋市二川宿本陣資料館『たべあるき東海道』 2000年