AR本多邸ぐらし いきさつ その2

展覧会「AR本多邸ぐらし」に向けて、着々と作品制作を進めています。
今回利用するアプリ「Aurasma」はスクリーンショットを取ることができるので、ARで出てきたとりさんと一緒に記念撮影も可能なんです。
画像を見ると、背景がぼやけているのがわかるでしょうか?
ぼやけた部分がARを出現させるために読み込む画像(トリガー)で、手前のとりさんがARです。
旧本多邸は個人利用の範囲なら写真撮影OKとのことなので、ハッシュタグ「#AR本多邸ぐらし」をつけてぜひSNSに投稿してください!喜んで見に行きます。

さて今回も、AR本多邸ぐらし開催にいたるまでのあれこれを書いていこうと思います。
前回の日記はこちら → AR本多邸ぐらし いきさつ その1

前回、旧本多邸の生活感のなさは文化財の活用をするうえで解決しておきたい課題だと書きました。
じゃあ誰がそれをやるの?と考えたとき、真っ先に思い浮かぶのは建物の所有者や管理者ですよね。
旧本多邸は岡崎市に寄贈された建物なので、岡崎市が所有者になります。
なぜ市が現在の展示方法にしているのかは定かではありませんが、実際の食器などの生活雑貨を置いて展示した場合の維持管理の手間と経費を考えると、本物の展示は難しいのではないかと思っています。
そして何より、特に行政が管理する文化財の場合、一度やり始めたことはなかなか変更や中止ができないので、来館者の動向に合わせて内容を変えていくのはとても困難です。その証拠に、何十年も前に設置されたままで字が薄くなって読みづらい解説板や、カセットテープに吹き込まれたまま長らく内容の見直しがされていないような音声での解説など、文化財を見に行った際にはよく見かけるものだと思います。
そこで、来館者の動向に合わせて素早く対応し、ときには実験的な活動にも取り組もうとした場合、行政よりも民間の方がはるかに活動しやすいのは明らかです。そして行政に頼らない民間の活動は、今後ますます重要になってくると考えます。
この考え方は、私がぐだぐだ言うよりも、おおいに影響を受けた木下斉さんの記事や著書を読んでいただくのが一番わかりやすいと思います。『稼ぐまちが地方を変える』を読んだときは、もう本当に今まで感じていたもやもやに切り込み、言いたいことを全部言ってくれた!とテンションが上がりました。他にも『まちで闘う方法論』や『地方創生大全』といった著書や、SNS等でも積極的に発言されているので、ぜひ読んでいただきたいです。
木下さんの主張はまちづくりについてのものですが、これは文化財の活用にも当てはまると考えています。文化財保存は行政に依存、言ってしまえば補助金に依存しているのが現実です。この先地方自治体や国の税収がどうなるかわからない中、税金しか頼るところがないというのはとても危険ではないでしょうか。
たとえ税収が減っても文化財を保存するためにはどうしたらいいのか?を考えると、一般的に「お金にできない価値がある」とされる文化財ですが、文化財が持つ価値を一部でもいいからお金に換えて稼ぐことができれば、税金に依存する文化財保存から脱却できると思うのです。これは無理な理想論ではなくて、発想と方法次第で実現できることです。実際、株式会社ノオトでは古民家を活用して付加価値をつけた宿泊施設を経営しており、文化財活用の先進事例とされています。

稼ぐ文化財保存を目指すために自分にできることは何だろうかと考え、第一歩として、「AR本多邸ぐらし」を企画しました。ですが、稼ぐといっても特に入場料等を取らないので、今回まったく収入はありません。笑
そして0円では実施できず、多少の経費はかかっているわけですが、それは今後への投資です。雇われの身の社会人が出せる金額でどこまでできるのか、知恵を絞っていきたいです。
「無理をせず できることからこつこつと」の気持ちで好きなように活動を続けていって、もしいつかあねこ家を見た企業の担当者や経営者の方が「だったら自分たちの方がもっとうまく、おもしろいものができる」と思って行動に移してくだされば、そんないいことはありません。